家相と間取り

家相基礎知識

家相・風水といわれる考え方は、『幸せに生きたい!』・『快適に暮らしたい!』という人々の想いに対して、風土や統計から導かれた先人からの教えです。
これらの考え方は、運命学に属するものですが、住む家の影響や環境運をどうみるかというところに主体をおいています。

したがって、部屋の間取りがどうあるべきだというのではなく、大自然の法則に即した通風、採光、磁気、地気の関係など、あらゆる要素の関係性を構築して生まれた運命学といってよいでしょう。

よく「家相学に基づいて建てたのに吉祥に恵まれない!」という声を耳にしますが、その多くは『家相』という一点に捕われ過ぎていて、『人との調和』という部分が欠如しています。 家相の教えでは、『人と家と自然との調和!』を最も大切なことと位置付けていて、それを満足させた家づくりこそが吉祥に恵まれた家づくりであると説いています。

 

家相の起源

古代中国の『陰陽五行説』という概念によるもので、宇宙は『陽』と『陰』と いう二つの原理によって構成され、「天と地」「男と女」という相反する概念がお互いに循環し、融合し、変化することにより森羅万象が支配されているといわれています。
また、『五行説』では、火・水・木・金・土の五つの要素により自然が構成されているという考え方です。これは物質だけでなく、メンタルな精神世界までもが「五行」により支配されており、運命の盛衰も司っているそうです。

すなわち、私達の生存環境を維持している大自然(宇宙、地球、地形、気候)と融合し調和しながら生きていくことの大切さを教えてくれているのです。
そういった考え方から、風水や家相という具体的な内容を示しながら、街や家のつくり方から人との関係を構築してきたものですが、長い時間を経て、多様な教えに変容を続けてきたために、吉相を占う方法も多様化しています。
そのため家相鑑定をお願いする場合には、必ず1人に限定してください。
鑑定士の方によって回答が異なる場合がありますので、建て主の方も判断ができなくなり困ってしまうことがあります。

memo:陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)とは、中国の春秋戦国時代ごろに発生した陰陽思想と五行思想が結び付いて生まれた思想のこと。陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)、陰陽五行論(いんようごぎょうろん)ともいう。陰陽思想と五行思想との組み合わせによって、より複雑な事象の説明がなされるようになった。※出展:wikipedia

 

四神相応

土地は「四神相応の地」が最も良いとされています。これは土地が「四神」に守護されているためで、四神とは東・西・南・北の守護神を意味します。

北:玄武(山・丘陵)

東:青龍(清流)

西:白虎(大通り)

南:朱雀(広野・湖沼)

つまり、東が低く・南が開け・西が開け・北が高くふさがっている地形のことですが、『日当たりが良く、北風を防ぐ地形』こそが理想だということです。
諸説はあるが、この考え方は都市づくり(日本においては平安京や江戸等)の基本概念として歴史上の権力者によって活用されていて、平安京を例にとると、
北(玄武)を船岡山、東(青龍)を鴨川、南(朱雀)を巨椋池、西(白虎)を山陰道として見立て都市づくりをおこなっていたとも云われる。ちなみに東北の鬼門封じが比叡山延暦寺という説もある。

但し、住宅においてはこのような理想の地を求めるのは困難なので、建築的な工夫を必要とします。
そんな工夫の基本は「採光と通風、そして人の和」

 

鬼門・裏鬼門と間取り

鬼門とは、東北の位置(東北を中心に北と東に22.5度ずつ振り分られた範囲)をいい、その反対側の南西の範囲を裏鬼門といい、忌み嫌われてきました。

※東北角の鬼門封じの欠き(京都御所)

 

この鬼門の由来は、中国においては、シベリアからの身を差すような冬の風やゴビ砂漠からの夏の熱風という自然環境によるものから、軍事的な要因によるもの(東夷に対する脅威)等といわれ、あの有名な万里の長城も東北の脅威に備えて造られたと云われています。

我が国においても、東北からの冷たい風や南西からくる台風といった自然現象や、蝦夷や百済に対する軍事的な脅威(家相伝来当時:602年)を『鬼』と位置付けていたためとされています。

現在においては、軍事的な脅威よりも自然現象に対する問題として『鬼門』を考えると、『風対策』や『湿気対策』と言ってよいでしょう。ですから、家相では、この位置に開口部や水廻りを設けることを禁じています。
ただし、家相の生まれた時代と現在では技術や事情も異なっているので、無理なプランは『人と家の関係』において好ましくない!という家相の大切な教えに基づき、じっくり検討したいものです。

例えば、トイレについては昔の「汲み取り式」から「水洗式」に変わっていますし、下水の普及により汚物の溜まる場所が敷地内から無くなりました。
さらに、開口部についても断熱性・気密性のあるサッシやガラス等を使用することや、植栽や塀等を設けることで『鬼』に備えることもできます。

家相は、時代変遷や技術発展に伴い、解釈に変化が生じて当然だと思います。
ただし、『自然と人間との関係を大切にした教え』や『採光・通風に配慮した家づくり』という視点は変わることがありません。自然エネルギーを効率的に活かした家づくりが現在注目されているのは、素晴らしいことです。

 

吉相の家

家相についてはいろんな考え方をもってらっしゃいます。

家相に不安を抱いていらっしゃる建築主さんには、家相の起源から意味までを説明して不安を払拭してあげるのですが、信じ切っていらっしゃる方にはご満足いただけるようにプランニングをしています。

平面図に家相盤を貼付けて、家相に対する配慮を説明します 

この場合、方位は建築基準法で使う真北ではなく、磁北で検討することが大切です。

 

家相でもっとも大切なのは、通風、採光、そして 人の和です。

家相盤での配置はもちろんですが、家族が集える空間を創造することに力点を置いています。

 

前田敦・前田敦計画工房

 

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著者情報

前田 敦 / atsushi-maeda

前田 敦 / atsushi-maeda

犬と猫と快適に暮らせる社会の実現を目指して、ペット共生住宅に特化した設計活動を行っている建築家
設計作品の中でも特に注目すべきは、ペットがストレスなく自由に走り回れることを重視して設計した「スロープの家」シリーズです。これまでの住宅設計にはない新しい発想から生まれたもので、独創的なコンセプトと緻密な設計が注目を浴び、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞といったさまざまなメディアで紹介されています。

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